竹野内勝次 の 論文



    IBM・SE論文    

            1976年     選外      オンライン  システムにおけるディスプレイ  コントロール
            1977年    準入選     オンライン  システム開発におけるIPT適用
            1978年     入選      SPCOBOL
            1981年     入選      コンピュータによる英文和訳プログラム
            1982年    準入選     ハードウェアー技術の発想転換(誤り訂正符号とその応用)
            1983年     優秀      OAシステムにおけるイメージ処理
            1983年     入選      自然言語による自動コーディングの実験的試み(共著)
            1992年     入選      提案型SE育成に関する一考察

    情報処理学会        

            1983年(?)年次全国大会で発表  (要・調査)

    日本技術士会        

            1985年(?)ソフトウェア開発の品質保証


1.創造について

2.阪神大震災とコンピュータシステム


■ 創 造 に つ い て

竹野内 勝次


マスコミによると景気は上向いてきたと盛んに宣伝されているけれどソフト業界 はまだまだ先が見えないですね。 そこで、提案型SEとか、提案型営業とかを求 められているのだが、今まで営業らしきことをやらなくても人さえ抱えておれば 儲かった業界でそんなに簡単に人は育たない。
創造力を発揮しろとか、創造的な仕事をしろと言われても、やったことがない者 にとってはどうすればよいのかわからない。

一体、創造とは何なのか? についてこのHPで議論したいのですが・・・

先ずは、小生のほうから 創造力とは何か、 そしてそれは訓練によって向上する ものなのかについて私見を述べます。
創るといっても全く新しいものを創るのは 10%ぐらいであり ほとんどのも のは、既存のものを組み合わせて創っているといえる。
また、脳の中で全く無から突然生まれてくるとは思えない。既に記憶されている 無数の記憶が互いに独立して存在していて、それらがある時ある意図によって関 連付けられ結びついて一つのまとまった発想となるのではないだろうか。そして その「ある時」というのも、かなり短い時間、ほとんどゼロに近い時間で、瞬間 的にかつ爆発的に関連付けられると思う。これが「閃き」だといえる。
ある問題に対する解を考えている場合には、この関連つけが繋がったり切れたり しながら、次第に大きくなっていって纏まった考えになるのであろう。これが試 行錯誤のメカニズムかもしれない。
試験問題を解くというのは、受験勉強であらかじめ記憶を組み合わせて大きな中 間部品を作っておき、限られた時間内で中間部品を組み合わせて解答を作るので あろう。山勘が当たった時は、かなり大きな中間部品が使えたという事で、山が 少しはずれると小さな中間部品を幾つも寄せ集める作業がいることになる。この メカニズムは一種の模倣といえる。
上のモデルが正しいとすれば、試験問題を解くというのと閃きや創造の世界とは 両極端に位置すると言える。
前者は出来るだけ大きな中間部品を備えているほうが優秀であるが、その分、全 く新しい発想にはなりにくい。一方後者は記憶の最小単位まで分解し(これを記 憶分子と呼ぶことにする)それを短時間に出来るだけ多く関連付ける能力といえ る。前者は正答を作る確率はかなり期待出来るが、後者の成功確率は非常に小さ いであろう。両者のうち、どちらが良いかという優劣問題ではなく両方とも必要 な能力なのである。頭が良いというのも、この記憶力と閃き力の両方を指してい る。
さて、記憶力は勉強をすることにより中間部品や記憶分子の数がふえるのである から明らかに訓練により成長する能力である。創造力の方はどうであろうか?  生まれつきという要因もあると思うが記憶分子から手が延びて他の記憶分子と意 味のある関連付けで結びつく、その時間が短い間に出来るだけ多く、 かつ遠く のものとも結びつく力、この活性力もまた訓練によって上達するものであると筆 者は考える。記憶分子の方はいったん記憶されると消えない(脳が死なない限り) が中間部品のほうは繰り返し使っていないと劣化し、結びつきが切れていくと考 えられる。つまり記憶力に
・中間部品の数が多いこと
・劣化しないように時々再生していること
・結びつきの力が強く切れにくいこと
という3つの要因が考えられる。
創造力の3要因としては
・関連付けのスピードが速いこと
・1つの記憶分子から出る手の数が多いこと
・手が遠くまで延び多くの相手と出会う機会が多いことである。

■阪神大震災とコンピュータシステム


氏名 竹野内 勝次
部門 情報工学
所属 日本技術士会近畿支部
    関西情報処理技術士会

氏名 山本 隆彦
建築士
所属 関西情報処理技術士会

1.はじめに

2.被害

3.分析

4.対策

4.1 ハードウェア

4.2 運用・ソフトウェア

5.まとめ


1.はじめに

 コンピュータシステムの安全対策に関しては、コンピュータ本体だけでなく、建物 、建築設備、及び、運用方針、人的な問題など広範囲に渡る。
 本稿では、阪神大震災により運用上影響を受けたコンピュータシステムの被害例を 通じて、今回の様な広範囲で複合的な災害に対処するために、計画時点に遡り考慮す べき各種の対策について検討を行う。なお、本稿で取り上げるコンピュータシステム は、当該コンピュータ機器が設置されている建物、及び、運用のために必要な建築設 備、通信設備などと分離して機能不可能な規模のシステムを対象とする。

2.被害

a.A庁舎 −−− 場所:神戸市(兵庫県)
 床構造にフリーアクセスフロアを採用、機器類が未固定のため、転倒などの被害が 生じた。
 Bメーカーの機器は転倒しなかったが、機器内部の物理的な被害が大きく、復旧に 手間取った。
 Cメーカーの機器は転倒したが、機器内部の損傷は軽微であった。
b.D社の開発センター −−− 場所:西宮市(兵庫県)
 運用センターは、関西では大阪府(地震による影響は無し)と関東では千葉県にあ る。
 開発センターは、建物及びコンピュータ機器共に大きな被害を受けたが、ソースプ ログラム及び仕様書などは、運用センターで保管されていたため、被害を免れた。
 当開発センターは廃止され、開発作業は関東の運用センターに移管された。
 D社では、今後、運用データに関しても、両センターによる二重化保管方式に移行 するが、膨大な量のトランザクションデータではなく、サマリーデータだけを二重化 する方針とする。
c.E社 −−− 場所:神戸市(兵庫県) 六甲アイランド
 建物及びコンピュータ機器共に損傷は軽微であった。
 交通網の寸断により運転要員が出社できないため、システムが起動できなかった。
d.F社 −−− 場所:神戸市(兵庫県)
 F社では、地震が少ないとの認識の上で、神戸一カ所にコンピュータシステムを集 中し、代替システムなどを計画していなかった。システムの停止期間が数日に渡り、 業務に影響を与えた。
 停電対策用の自家発電機が地震により故障し、この影響により記憶装置への被害も 拡大した。このため、データの修復に時間を要した。
e.G社 −−− 場所:神戸市(兵庫県) ポートアイランド
 水冷式のコンピュータのため、起動時に大量の冷却水が必要とされるが、断水の影 響により長期に渡り再稼働できなかった。
f.H社 −−− 場所:門真市(大阪府)
 コンピュータ用の冷水配管に損傷を受けた。
g.I社 −−− 場所:大阪市(大阪府)
 コンピュータ機器を設置するフロアが免震構造床のため、被害を免れた。
h.その他
 公衆回線、専用回線共に、地震による断線などの被害を受けた。物理的に修復され た後も、公衆回線に関しては通常の数倍以上の回線利用により不通状態が続き、公衆 回線を使用したデータ通信が長期に渡り利用できなかった。
 一般のオフィスにあるコンピュータ機器類が、消火などの水により被害を受けた。

3.分析

 コンピュータシステムの安全対策に関しては、電子計算機安全対策基準(通産省) 、システム監査基準(通産省)、情報ビルに係る安全対策基準(建設省)などの基準 があるが、これらの基準は、単独で部分的な災害を想定して作成されたものである。
今回の様な広範囲で複合的な災害を想定したものではないし、相互に影響する分野に 関しても網羅されていない。
 コンピュータシステムが正常に稼働するために、大きく分けて次の4項目が重要で あり、これらは互いに影響を受けている。
 @コンピュータ機器本体及び本体付属の周辺機器
 A建物及び建築設備、通信設備
 Bデータ保護及び代替システム
 C運転要員
 この節では、被害例をこの4項目に沿って分析する。
@コンピュータ機器本体及び本体付属の周辺機器
 本体を含めて機器については、補修の必要はあるが、比較的丈夫であったと考えら れる。
A建物及び建築設備、通信設備
 コンピュータシステムは、単体で機能するものではなく、コンピュータ以外の機器 ・設備と複雑に組み合わされて機能するものである。コンピュータ機器本体の保護だ けでは不十分であり、運用を支援する設備類が正常に機能しないと、実際には稼働で きない。必要なインフラの内容を常に正確に把握しておくことが必要とされる。
 今回の場合、停電対策用の予備電源(自家発電機)の故障、長期に渡る停電や断水 、公衆回線の不通よるデータ通信への影響、などについての事前の検討が不足してい た。
Bデータ保護及び代替システム
 コンピュータシステムは、大規模となればなるほど、単独で運用するものではなく なり、当該システムを利用する対象が分野的にも地域的にも広く分散し、一部の障害 が全体の運用に影響を及ぼす様になる。コンピュータシステムの安全対策を検討する 場合には、当該システムの運用停止及び停止期間が業務に及ぼす影響の度合いを考慮 する必要がある。
 今回の場合、地震が比較的少ないとの認識の上で、一部の組織体以外、遠隔地への データバックアップや代替システムなどを採用していない場合が数多くあった。
C運転要員
 交通網の寸断により、運転要員の確保に影響を受けた。
 直接の担当者以外の運転要員が、システムを起動出来ない例があった。

4.対策

 通産省では、今回の震災の調査結果を参考にして、電子計算機システム安全対策基
準の抜本的な見直しを図る方針である。
 具体的な内容として、
@重要な施設の場合、震度5以上を想定した耐震性を持たせる。
A災害復旧時の代替コンピュータの確保
Bバックアップ機能、保守機能の整備
C電源設備の安全性確保
Dデータ盗難防止などの災害発生の際の管理体制の明確化 
などが盛り込まれる。
 この節では、通産省の案を参考として、コンピュータ本体及び当該機器が設置され ている建物などを含むハードウェアと、当該システムの運用・ソフトウェアの両側面 から安全対策の要点を検討する。

4.1 ハードウェア

a.コンピュータ機器本体
 (自己完結された機能)
 無停電システム
 自動シャットダウン機能
 記憶装置の二重化
 耐震性のある機器の設置方法
b.コンピュータ機器を設置するフロア
 耐震性を有する床構造(例:免震構造床の採用)
 消火設備・消火方法(例:端末や部門サーバの設置場所での消火スプリンクラー利 用の再検討)
 防水・浸透水対策
 機器・備品を含めた配置レイアウト
c.コンピュータ機器を設置する建物:建築設備
 電気設備・空調設備・冷却設備などの耐震性
 各種配管類の耐震性
 電気設備・空調設備・冷却設備などの非常時の予備システム
d.コンピュータ機器を設置する建物:構造
 建物の耐震性向上(ただし、設置フロアの揺れは低減されない。)
 免震構造・制震構造(設置フロアの揺れは低減可能である。)
e.コンピュータ機器を設置する建物:建設位置
 周辺地域の防火対策の状況
 周辺地域のインフラの整備状況
 地盤の状態(例:活断層の有無)

4.2 運用・ソフトウェア

a.運転要員
 直接担当している運転要員との連絡手段
 被害地域外からの代替運転要員の確保
 代替運転要員への運用移行体制の整備
b.データバックアップ
 バックアップシステムの整備
 バックアップデータの保管場所(同フロア、別棟、または、遠隔地のセンター)
c.代替システム
 短期的に利用できる代替システムの確保(社内の別センター、または、専門業者委託)
 代替を必要とされる処理範囲
 代替システムの起動までに要する時間

5.まとめ

 コンピュータシステムの安全対策は、コンピュータ機器類以外に、建物及び建築設 備システムとして備えるべき防火・防災・防犯機能と、情報通信システム側で備える べき情報保護・不正使用防止機能及びシステム信頼性向上機能に大別される。その中 で、コンピュータ機器自体への対策に関しては、かなり準備されていると考えられる 。これに対して、当該機器を取り巻く建物、設備、運転要員、通信回線などに対する 対策が不十分である。
 安全対策として重要な点は、これらの対策が個別に構築されるのではなく、高度で 総合的にバランスのよいシステムとして構築されることにある。
 さらに、今回の様な広範囲で複合的な災害に際いては、非常時に動くべき機器・運 用体制自体が被害を受けていることも考慮しておく必要がある。単に、非常時に働く 各種の機器・運用体制を準備するだけの表面的な安全対策では不十分である。実際の 災害時に、個々の機器・運用体制がどの様に動くかを、事前に、机上シミュレーショ ンを行っておく必要がある。シミュレーションに際しては、コンピュータの専門家以 外に、建築、設備などの専門家、及び、当該システムの運用に責任を持つ情報担当役 員の参加が必要である。
 なお、データバックアップや代替システムの必要性は言うまでもないが、その場合 、1カ所に集中するのではなく、出来る限り遠隔地(少なくとも、他府県)に、デー タバックアップや代替システムのためのセンターを設置した方が良い。
 最後に、安全対策は、どの様に準備しても完全なものには成り得ない。事前の準備 と訓練は必要であるが、それ以上に、災害が起こった時の対応が重要である。
 例えば、数日か数週間を要して完全復旧すべきなのか、逆に、部分的なシステムに 限定し速やかに復旧をすべきなのか、または、臨時のプログラムを作成して一時的に 処理して行くのか、などを決めておくことが必要であり、被害状況に応じて柔軟に対 応策を変更する必要も生じる。さらに、組織体内部の都合だけでなく、被災者保護や 災害復旧の目的で速やかなシステムの復旧を求められるなど社会的な責任が生じる場 合も考えられる。
 この様に、正確な状況判断と速やかな決断が、システム復旧の鍵を握っている。故 に、緊急時に於け指揮系統を明確にしておく必要がある。さらに、その対象者が指揮 を取れない状況に際しての代役も決めておくことが必要である。